生きてていいよ、たぶん

誰かのために生きたい

ゆうれい

輪郭線が、空気に溶融していく。 私が抽象になっていく。 ある八月。 夢際に立つあなたの温い右手。 妄言の果てにできた暗い希望。 私はいない、どこにもいない、あなたとあなた以外のどこにも。 私はいない。それが眩しい。あなたの未来が光るから。 柔い視…

終わり、おわりおわり、おわった!ついに僕は言葉によって想いを交わすことが不可能になった! 誰にもなれなかったおわったことばまあ」まも

私戦7

思想家達はみんなとおい国へ行ってしまった。 もう二度とこの国へは帰ってこないらしい。もう二度と会えないらしい。 寂しくもなれない、出会ってすらいない君たちと交わした言葉だけがリフレインしている。 骨になって、灰になって、墓碑の周りにたくさんの…

私戦6

年を明けてからというもの、僕には生きたものがもはやどこにもいないように感じていた。いのちが群生するであろう都市へ迎えども人などおらず、核戦争後の近未来に1人取り残されたような錯覚をおぼえる。 草花の萌えぬ薄灰色の地平をただ独り歩いていた。多…

「公園があるんですよ、裏手に、墓地がすごく近くて部活終わりとかに通るとすっごく怖いんですけど、その公園が街の中でもちょっと高いところにあって、上から見下ろすんですね。日が落ちたら電気とかつくじゃないですか、そうなってくると綺麗なんですよ。…

私戦5

生活の前に思想は無力だよ。 もはや僕たちは誇るものが現実的な資産にしか見出せなくなったこと、君たちは気付いているだろう。 * 僕は、もう理解した。 ついに僕は役を降りられず、性を切り離せず、言葉も捨てられず、僕を終えることすらできない。 僕の住…

愚痴

心から愛していた音楽家が居た。 彼の作る作品は、少なくとも僕にとっては、よかった。よかったのだ。 終わりのないものは存在しない、誰もが分かっている事だが誰もが受け入れがたい世の理だ。 直に彼は僕の見えるところからは居なくなってしまった。悲しく…

まだ希望はある

それは峯田和伸だったし、重松清だった。 すごくアブストラクトなそれは僕の言う個人の中に生きているかどうかすらも不確かで、もしかしたら「無い」ものなのかもしれないとすら。 ここに無い全部が生まれる時、一体何が起きたんだろう。 何かを乞うこと。 …

私戦4

一つの終わりを目の前にして、ほんの少し、ほんの少しだけど追いすがってしまった。 その一つの終わりは、僕にとって本当に意味があって、或いは、僕以外の何者かについてもはるかに意味のある、何か。 終わりは、来る。 全てに。 僕は時折、全ての終わりが…

過去を打ち遣る

理解と共感は四次元空間のへそとつま先。 教室の窓、やがてくる夕立。 遠景から来る剥がれない耳鳴り。 ごまかしごまかしやってきた君が、僕に目で言った。これがもう限界。 それでもうおわり。 あのベンチからは多くが見渡せた。 電器屋の有害電飾が綺麗だ…

私戦3

頭の悪い奴が考えて設計をしたんだろうな、小汚い家々がひしめきあってる街を歩いた。 雑で雑で、猥雑で、乱雑で、かける言葉もその必要もない吐き捨ての街。 ゴミ置場みたいな路地からうまそうな匂いがした。醤油を焦がしつけてるみたいな匂いだった。 ほん…

また誘うから

時々、自殺しちゃった人のことを考える。 汗ばむ夏が終わると、そういう死の匂いが充満してくる。その気配を感じてる。 ぼくたちにわかり得ないくらい痛くて苦しかったから、掴んでた手すりを離したんだろうなって思う。越えちゃいけない線を越えたんだろう…

生きてていいよ、たぶん

今日は朝早くから蝉がうるさくて目がさめた。もしかしたらタイマーの切れた冷房のせいかもしれないけれど、不快な目覚めだった。 とんでもない日照りと暑さで、舞台照明に初めて当てられた日を思い出した。 その時の季節は秋、ほんの少しだけ生きた実感がし…

私戦2

100年待てるか。 待つ人を見ている。じっ、と見ている。 避暑、河岸から、なにを待つこともなく、ただ対岸を見ている。待った人間の影法師が、美しく揺らいでいる。 百合になって帰るなんて、不誠実だと思う。 あまりにも美しいものを見ると息苦しくなる。 …

私戦 1

「酩酊しているな」 そう言われた。多分そうだ。私は酩酊していたに違いない。そう思う。そうだ。そう。 飲み込み辛いものを飲み込むためには些か酔いが足りない。 他人の幸せが致死毒だと思っていたのに、どうやらそうじゃない。 私を死に至らしめる毒性は…