生きてていいよ、たぶん

誰かのために生きたい

「公園があるんですよ、裏手に、墓地がすごく近くて部活終わりとかに通るとすっごく怖いんですけど、その公園が街の中でもちょっと高いところにあって、上から見下ろすんですね。日が落ちたら電気とかつくじゃないですか、そうなってくると綺麗なんですよ。上から見下ろすと。そこ、まあまあ、あの、恋人とかね、いるんですよ。数年前の私もその内なんですけどね、まあそりゃそう言うことくらい人間だからあるんですよ、想像しなくていいですからね。

ほんとうのところはそうじゃなくて、この前たまたま通りかかって、まあたまたまと言うか確かにわざとだったんですよ、意図して、あ、通ろうかなーって、ひさびさに感傷的に、なくなったところを、喪失を撫で回して感傷的に、なろうかなーって、そう思ったんでまあたまたまと言うのは間違いでわざとなんですけど、まあその公園の様子が変わらなくて、ちょっとカビてる木でできたベンチとか、変な感覚で開かれてる遊具、ブランコのところで当時の好きだった子に、まあこれはいいか、まあ変わんないんですよね、そんな数年で街とか世界とかは大きくは変わんないんだなーって思ったんですよ。変わったのは私だけ、とか言うオチではないんですよ、私だって変わってないですから、何にも変わってないですから。でね、なにがって、その、一番言いたいのは私たちなにを間違えたんですかね、ってところで、一番言いたいって言うほど私に言いたいことなんてないんですけど、この話に限って一番って多分これなんですよね。何かを間違えないと、というか、何かが噛み合わなくなってこう、変わるんじゃないかなって思うんですよ、私はね。間違えたわけじゃないなら多分その当時の恋人ともずっと続いてるし、なんなんですかね、ヒリヒリひりついた感じでお茶割り飲んだりしないじゃないですか。聞いてます?私たち、あなたもですけど、間違えてここまでこう来たんじゃないかなって思ってて、その間違いってなんなんだろうなって感じなんですよね。なんでそうかって、まあその、結果的に言うと、まあ、怖くなっちゃって、公園で。お墓の方がね。やだなって、思ったんですよ。その時初めて。」