生きてていいよ、たぶん

誰かのために生きたい

私戦5

生活の前に思想は無力だよ。

もはや僕たちは誇るものが現実的な資産にしか見出せなくなったこと、君たちは気付いているだろう。

 

 

僕は、もう理解した。

ついに僕は役を降りられず、性を切り離せず、言葉も捨てられず、僕を終えることすらできない。

僕の住むところに幸いはなく、覗き込む窓の中にばかり温度を感じている。

街の群衆にも肩を並べられず、誉ある革命家という犯罪者にも名を連ねるでなく、ただ舗装された道を行き続けるしかなくなった。

でももし、もし、万が一、奇跡が起き、終えられなかった僕の捨てられなかった言葉で切り離せなかった性を許すことができて降りられなかった役の台詞が、誰かの琴線に触れるなら。

誰かの人生の何かになるならば。

それが、僕に残された最後の幸いかもしれないと、僕は私戦を止めるわけにはいかない。

 

 

生活の前に思想は無力か。

違うとも。戦いを止めた君が、思想を棄てた君が、無力なのだ。