私戦2
100年待てるか。
待つ人を見ている。じっ、と見ている。
避暑、河岸から、なにを待つこともなく、ただ対岸を見ている。待った人間の影法師が、美しく揺らいでいる。
百合になって帰るなんて、不誠実だと思う。
あまりにも美しいものを見ると息苦しくなる。
窒息したいのだと思う。
死すべき運命の慕情、紫陽花に滴る玉のような雫、美しい美しい美しい美しい美しい美しい何か。
その耽美からなる自慰がやめられない。
「100年、待ってくれるか。」
「次の秋までなら、待ち続けるよ。」
そんな人形劇、そんなDas Gemeineを頭で遊んでいる。
僕は僕をとうとう許せない。
好きなあいつの家に、わざわざ充電器を忘れていくいじらしさ。
血が交わるほど近づきたいのに、肌が触れ合うと止まらない寒気。
誰かのプレイリストの中に自分の偏愛を見つけた時の笑み。
蝉。
誰かの全てになりたい気持ち。
誰の何にもなれない現実。
盛夏、非現実の蜃気楼に、苛立ちと熱。
2018 07 22