私戦6
年を明けてからというもの、僕には生きたものがもはやどこにもいないように感じていた。いのちが群生するであろう都市へ迎えども人などおらず、核戦争後の近未来に1人取り残されたような錯覚をおぼえる。
草花の萌えぬ薄灰色の地平をただ独り歩いていた。多くの生命から間借りしていた僕の生存はこの先どのようにして繋いでいけばいいか。
おかしくなっていた。死にたかった僕は、どうして、生きる術を得ることに必死になっていた。
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粘膜の刺激のみが君を許すのではないと信じている。夜明け前のブルーみたいな絶頂感はシネマだけで充分だと、それだけで満ち足りるのだとずっと信じている。
僕は邪教を信じている。
僕は、ありもしなかった、ただ失われた青年期の色彩とその欠落した傷跡、感傷を信じている。
二枚舌の言説よりも、独占的なマゾヒズムを信じている。
ロジカルな可能世界の拡張よりも、生き物の未来を奪う行為を信じている。
性的な全てを混ぜ合わせてできたアイコンに、ピンクとグレーの嗜好を塗りつけ、愛されるためだけに生まれた人間をこそ、崇め奉る。
今夜も心を窶し、全ての心を受け止める君を信じている。
僕はそれを窓から眺めていた。
渇愛の君を羨ましく見ていた。