私戦7
思想家達はみんなとおい国へ行ってしまった。
もう二度とこの国へは帰ってこないらしい。もう二度と会えないらしい。
寂しくもなれない、出会ってすらいない君たちと交わした言葉だけがリフレインしている。
骨になって、灰になって、墓碑の周りにたくさんの人が花を手向けるころに、僕はひとりになる。
都市を丸ごと抱きしめた藍色に名前をつけた詩人が僕の頬を幾度と打ってくる。
「きみのまけ」
目が覚めても何者でもない僕は、変り身をずっと望んでいる。夏の襟足の匂いを思い出しながら。
軽薄なものばかり愛してしまう。花火、鳴く虫、波、制汗剤。
もうここにはいられないかもしれない。
幼年期を終えずに、死ぬかもしれない。